吉祥寺美術館「宮本典刀―街の記憶―」開催中。
カルチャー
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銅版画家・宮本典刀が描き出す、記憶のなかの街。
吉祥寺美術館の企画展示室で、6月10日までの展覧会『宮本典刀―街の記憶―』が始まりました。
このコラムでは、展示情報とその関連イベントをご紹介します。
吉祥寺美術館は、街中にあり気軽に立ち寄れるロケーションながら、展示室に一歩入ると静寂のなかでアートと向き合えるという贅沢な空間です。ときには作品をゆっくりと眺めて、作家のみた風景に思いを馳せてみては。
どこかにある、どこでもない、街の風景一。

銅版画家・宮本典刀(Noriwaki Miyamoto)は、いわく「心のなかに沈んでいる記憶」を丁寧に拾いあげ、それらを再構築して、街の風景を描いています。
宮本は、旅先で、あるいは日常生活の延長で、大通りから人目につかない裏路地にいたるまで、長い時間をかけて、街を歩きまわります。その間、スケッチブックをひろげて写生をしたり、メモを取ったりすることはありません。彼はひたすら歩きつづけ、光や色、肌に触れる空気、におい、音など、街をかたちづくっている要素を、そのままに、心身に受けとめてゆきます。
そして、宮本のうちに集積した街のさまざまな「記憶」 は、切妻屋根の家々、煙突や橋といった、人間の暮らしを暗示する構造物のかたちをとって、描きだされます。
きわめて精密な技術をもって構成される宮本の画面。
宮本の画面は、微細かつ均質な粒子によってあらわされたアクアチントの色面を、彼のきわめて精密な技術をもって構成することで成立しています。いわゆる写実からは遠いところにあるフラットな表現は、私たちを個の特定から解き放ちます。
どこでもない風景のなかで、私たちは自らの心奥に眠る「記憶」との邂逅をはたし、私たちを私たちたらしめているものと、向き合うことになるのです。

「色をみると音が聴こえる」「音がみえる」
また、音楽との関係性も特筆すべき点です。
宮本は日ごろから多彩な音楽に触れ、とりわけスペインやポルトガルの民族音楽、またF.モンポウやR.シュトラウスなどの楽曲を愛聴し、ときに音楽から着想した画題も生まれます。とはいえ彼は、音楽との結びつきを殊更に意識しているわけではありません。
「色をみると音が聴こえる」「音がみえる」とは宮本のことばですが、たとえば絵画作品などを鑑賞する際にも、そこにおのずと音を感じとるといいます。

2000年 アクアチント、エッチング
最初期作から最新作まで。
本展は、宮本典刀の作品を個展として紹介する、美術館では初めての機会です。宮本がアクアチントの色面によって街を描き始めた1999年以降の作品を中心に、最初期作と最新作を含む約70点を展観します。
あらゆる情報が瞬時に過ぎ去ってゆくばかりのいま、私たちが見失った「記憶」はどれほどあるでしょうか。
宮本の作品をとおし、それらとふたたび出あうことができるかもしれません。

5月24日(土)「鈴木大介ギター・コンサート」(先着順申込)
国際的ギタリスト・鈴木大介氏の珠玉の演奏を、宮本典刀展のためのプログラムでご鑑賞いただけます。
開催日:2025年5月24日(土)
開催時間:15:00〜16:00
開催場所:吉祥寺美術館 音楽室
対象:どなたでも
申込み:2025年4月19日(土)10:00より電話にて受付・先着順
参加費:美術館入館料のみ
・当日の入館券をコンサート受付でご提示ください
募集人数:50名
出演:鈴木大介氏
主催・問合せ:吉祥寺美術館(TEL 0422‐22‐0385)
特別展示『宮本典刀―路地裏―』(PENNY LANE GALLERY)
5月2日〜8日の7日間、コピス吉祥寺A館1階、吉祥寺美術館と同じ建物内にある「ペニーレーンギャラリー」でも以下の会期で作家の特別展示を開催します。
会場:PENNY LANE GALLERY(コピス吉祥寺A館1階)
会期:2025年5月2日(金)~5月8日(木)
開場時間:13:00~18:00
※初日は14:00から、最終日は16:00まで
入場無料・会期中無休
吉祥寺美術館『宮本典刀―街の記憶―』
会期:2025年4月12日(土)〜6月1日(日)
開館時間:10:00~19:30
開催場所:武蔵野市立吉祥寺美術館 企画展示室
入館料:一般300円、中高生100円
※小学生以下・65歳以上・障がい者のかたは無料
主催:武蔵野市立吉祥寺美術館(公益財団法人 武蔵野文化生涯学習事業団)
詳しくは吉祥寺美術館サイトでCheck!